「調布PARCO芸術祭―芸術と生活のあわい」に先駆けて、夏休みプレワークショップ「はたらくパルコ広告制作室」が2026年8月9日に開催されました!
これは、実際に業界の第一線で活躍するクリエイティブ・ディレクター、コピーライター、フォトグラファーの大人たちと一緒に、調布パルコにある様々なお店のポスター制作を子どもたちに体験してもらう企画。8歳から15歳までの子どもたちが、調布パルコ内にある10店舗のポスターデザインと広告コピーを1日で作り上げるという、かなり本格的なおしごと体験となりました。もちろん、出来上がった作品は芸術祭で展示・活用されます。
- ライティング
- わたなべりえ
- 写真
- 小沼慶太郎
- 編集
- 金森香
広告ってなんだろう? 人を動かすキャッチコピー?
広告とは、お店や商品をお客さんに知ってもらい、興味を持ってもらうもの。言葉や絵、写真だけで、見知らぬ人を動かさなくてはなりません。
「調布PARCO芸術祭2026」の広告表現を実際に作った、平野篤史(Affordance inc.)さんがまずは、今回の芸術祭のポスターはどのようにして作られたかというお話から始まりました。

「パルコの建物がなんかドレスみたいだなー、そうだ、これをドレスに見立てて人の顔をつけてみよう!って思ったんだよね。でも写真だとちょっと怖いから絵にしてみたよ。」
「えー、そんなふうに考えるんだね!」「なるほど!」。くすりと笑い声が聞こえる場面もありながらも、子どもたちは真剣な表情。

そして、コピーライターの兼田美穂さんからは、「他にないいいところ×どんな気持ちになってもらいたいか=人を動かすキャッチコピー」というお話も。この言葉そのものがすでにキャッチコピーで、子どもたちの心をグッと掴んだ様子!

お店に取材に行くぞ! 借り物競走みたい!
3名1組でチームを作って、担当店舗を決めます。チームの代表が前に集まって、責任重大のじゃんけんタイム。初対面の子どもたちも多い中で、どうなるかな?という大人の思いをよそに、ここで一気にアイスブレイク! わいわいがやがやしながら担当店舗が決まると、やがてそれぞれ足早にパルコ各階のお店へ取材に出かけました。
限られた時間内で、実際に店舗へ伺ってお店や商品を見たり、店員の方にお話を聞いたりして、どんな広告を作るかを考えなくてはなりません! 大変だ!

出かける先は、Zoff(メガネ)、パルコブックセンター(書籍)、マーノクレアール(生地・手芸材料)、ローズマリー(化粧品)、魚耕(魚屋)、ポンパドウル(ベーカリー)、銀座山野楽器(CD・DVD・楽譜・楽器)、九州屋(青果店)、ノジマ(家電)、靴下屋(靴下)の10店舗。
さすがみんな地元の子供たち。調布パルコには馴染みがある様子でどんどん歩いていきます。電気のノジマや、手芸屋さんは店舗も商品も豊富で、どうするのかな? 本屋さんも色んな種類の本がたくさんあります。
お魚屋さんやパン屋さんなど、デイリーのお店に興味を持ってもらうような広告を作るにはどうするんだろう? 撮影する商品を借りたり、取材したり。なんだか借り物競走のような雰囲気もあって楽しそう!




子ども会議は、言葉と手を動かしながら
お店から戻ったら、いよいよ話し合いが始まりました。
どうやってつくる? 宣伝コピーは? 絵を描いたり、お店の名前や商品名を紙に書き出したりして、アイデアを膨らませていきます。
直感的に手を動かしたり、色紙やモールで何かを作っている小学生たち。一番年上の中学生3人のグループは考え込んでいます。どうやら担当する電気屋さんのノジマは商品の種類の数も多く、どう広告にするか悩んでいる様子でしたが、黙々と紙に鉛筆を走らせ始めました!

各チームには、広告制作の現場にいるデザイナーやプロデューサーの大人が1名ずつついて、見守りながら子どもたちのアイデアを引き出します。そして子どもたち同士が、それぞれの得意を活かした計画を自ら立てていく様子にも目を見張ります。
ランチタイムには、今回の「校長」ともいうべき平野篤史さんが、コピーライターの兼田さんと全テーブルを巡回し、午後の撮影に向けて計画をまとめていきます。
どのチームも、子どもたちの表現や思いを活かして、アイデアを前へと推し進めるような声がけ。さすがプロです!
広告のイメージをフォトグラファーに伝える、本格的な撮影体験
次は、それぞれのグループが用意した広告素材を、フォトグラファーの関矢士門さんに撮影してもらいます。
「どういうふうに撮影してもらいたいか、自分たちの広告のイメージをどんなことでも伝えてください。そういうみんなの意見がカメラマンさんの撮影の助けになります!」とのアドバイス。
あくまでディレクションは子どもたち。その思いを汲みながら、関矢さんはいろんな角度やライティングで撮影していきます。時には子どもたちもレフ板(光を反射させる撮影道具)を持ったり、カメラマンさんのアシストも体験しました。
プロのデザイナーさながら、モニターの前で待ち構えてチェックする姿も。プロの機材で撮った写真はやっぱり違う! イメージしていた世界がさらに魅力あふれる形で目の前に映し出され、撮影中は「わー、すごーい」と、感嘆の声があふれていました。


子どものディレクションで、大人デザイナーが仕上げていく
最後の詰めは、パソコンを使った作業です。平野さんが率いるデザインスタジオのAffordance inc.からプロのデザイナーさんたちが、各グループの要望に応え、最終デザインに仕上げていきます。色あい、宣伝コピー、フォントの種類、大きさ、位置など、納得するまで作り込んでいます。作業が終わった子どもたちは、そのままお絵描きや工作を続けています。工作や絵が好きな子どもたちが集まっているだけに、グループを超えてお互い作ったものを見せ合ったり、キャラクターを描くのが得意な子が他の子に描き方を教えていたりと、数時間前に初めて会ったとは思えない!

完成! そしてプレゼン……!
「メガネの特徴をそれぞれ表現してみた!」というZoffのチームや、魚をさばくサービスを知ってほしいという魚耕のチーム、おすすめの定番パンをおいしそうに見せたポンパドウルのチーム、お菓子みたいと感じたインスピレーションを大切にしたローズマリー(化粧品)のチーム、日本のあちこちを旅することを描いた靴下屋のチームなどなど、各チームの創意工夫が発表されました。

みんなの前での発表はちょっと緊張したかもしれないけど、立派な姿でした。 こうして、ひらめきと集中力、手作業への愛にあふれた充実の7時間のワークショップは無事終了! 芸術祭でまたみんなに会えるかな?
さて、筆者自身、帰り道、さまざまな広告を見る目が変わりました。
広告を作った人はどんなことを私たちに伝えたいのか、どこが私にとってドキッとするポイントなのかなど、街には私たちをドキドキ、ワクワクさせてくれる仕事がたくさんあるのだなと、改めて気付かされました。
今年の芸術祭のコンセプトである「芸術と生活のあわい」に、まさに広告は漂っているのではないでしょうか。
ぜひ、子どもたちの広告を見に、芸術祭に足を運んでいただければ幸いです。